本研究は、世紀転換期ドイツにおいて複合的に現象する「文化」が「知の変動」を伴いながら生成される「生」に関する様々な運動、創作、知とどのように関連していたかを探り考察することを主題としている。本研究では文献、映像等の資料を集積し分析解読することが中心的課題となるため、本年度も昨年に引き続き国内外での資料収集、資料蓄積を行うための調査を行った。またとりわけ同上時期の言語理論に関しては、昨年に引き続き同僚研究者らの協力を得て知見を深めると同時に資料の解析、収集を行った。 1) 海外での資料収集に関しては、昨年同様引き続きベルリンのドイシ国立図書館を利再し資料の収集と分析・解読を行った。さらに同市内の資料館、博物館、展覧会を訪間し知見を深め、資料の収集も行った。 2) フーコー、アガンベンらの諸説に依拠し、ドイツ市民社会の形成と「生」権力、「生」政治との関連を調べるため、関連資料を収集し分析・解読を進めた。 3) 本年度は文学関連め資料に加え、とりわけPeter Behrensらドイツの工芸・建築において重きを成した建築家と上記「生」言説との関運を調べるための資料収集と解読・分析を行った。 4) 同時期には本研究に関わる「生」政治、「生」言説を拠り所とした様々なサブカルチュアが成立したことも大きな特徴であった。「野外」「裸体」「食」「衣装」「身体」という領域におけるこうした動きについても資料を収集し分析・解読を行った。 これらの研究を通し、「生」にかかわる作用の強化、その社会構成的「知」の深化が実際の「文化」の領域に限定されず広く拡大していく様が明らかとなった。
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