堀恵子はUCLAへの出張で得た資料をもとに「『セックス・アンド・ザ・シティ』に見る愛のかたち-ミランダとスティーブの場合-」を執筆し、HBO版『セックス・アンド・ザ・シティ』の意義、六年の長きに渡り視聴者を魅了した理由、そしてその影響力などを考察した。本論文の原稿は提出済みである。 森岡裕一と堀が共同編集した論文集が『「依存」する英米文学-阪大英文学会叢書5-』として英宝社から刊行された。その中で堀はメアリ・ウルストンクラフトの恋愛依存をギルバート・イムレイとの関係を通して考察し、森岡は涙する少女のモチーフの持つ意味を考えることにより、「共依存」の視点から禁酒小説と感傷小説という二つのジャンルにまたがる共通項を抽出し、両者の接点を抉り出す論文を書いている。 森岡裕一は、アメリカにおけるフィールドワークで禁酒小説を多数収集することができ、目下、それらの分析を鋭意行っている。研究成果については個々に活字媒体により発表中であり、上記研究書の編集もその一部である。また、研究成果を土台にした講義を勤務先で実践している。 田口哲也は依存を形成する社会構造についての理論構築の成果の一部を論文「ケネス・レクスロスとカリフォルニア」として執筆した。同論文は近々上梓される『カリフォルニア表象と文化変貌』(鶴見書店)に所収される予定である。また、アムステルダム大学での事例研究と依存現場での参与観察の成果を生かし、薬物依存の度合いを測る尺度を試作し、さらに社会階層と都市空間に於ける薬物依存の分布を記述する方法を開発中である。
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