フランスにおける、ボードレール以降の詩人たちの言語観を明らかにしつつ、言語学における詩学の役割を考察した。従来、言語学において、詩は伝達を目的としない言語と見なされていた。これに対し、20世紀後半の詩人たちにとっては、詩の言語学はさらに新しい発展を見せ、読み手と詩人だけが対峙する場としての言語行為の言語学となっている。指示対象が詩人にとって「いま・ここ」にしか存在しない、という20世紀の詩的言語学はさらに発展し、詩の世界は「いま・ここ」にしか存在しない読み手によってのみ支えられたものとなっている。以上の視点の変化を、さまざまな詩人の言語観をもとに示した。
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