研究概要 |
本研究は、フランス15・16世紀の世俗劇に関して、愚者ないし道化のトポス、聖・俗の関係性、そして認識論の三つの領域にまたがる視点から光りを与え、転換期の文化の一翼を担ったフランスの演劇道化の知のあり方を聖と俗の枠組の中で解明しようとするものである。そのなかで研究3年目の平成21年度はまず、本テーマの基盤的部分をなす原典研究を初年度からの継続として続け、道化(的人物)の言説に表れた知の形式が、聖と俗との関係性においていかなるものであるかという観点のもと、テキストの解読・分析・考察を行った。対象としたのは、Recueil general des sottie, 3 vol.ed. E.Picot ; Recueil Trepperel : les sotties ; Recueil du British Museum ; Recueil Cohen ; Recueil Trepperel : les farces ; Recueil La Valliere ; Moralites francaises, 3 vol.ed.W.Helmich ; Recueil de sermons joyeux, ed.J.Koopmans;他の選集から、過去2年間で取り上げていない、道化ないし道化的人物(sot, fou, badin)を含む作品である。 同時に本年度は作者の研究に従事し、彼らの置かれていた知的状況と社会的背景を、聖と俗の視点から洗い直すべく、大学における修学内容の調査、特に、自由七学科のうちで最も重視されたといわれる弁証法の内容や、哲学・神学さらに人文主義的学問にかんする彼らの知識や関心・関与のあり方について、また学生ないし法廷書記としての彼らの生活や立場について、演劇集団の母体としての祝祭組合の実態について、の詳しい調査と考察を行った。 以上の研究から得られた成果は、《Le jeu d'errance entre le sacre et le profane : Sots en quete de la connaissance de soi dans le theatre profane des XVe et XVIe siecles》と題して、Le voyage createur (E.Bonnet編、L'Harmattan, Paris, 2010.3)に発表した。
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