アテーナイ演劇だけではなく古典学全体におけるジェンダー研究の歴史を振り返り、最新の動向を述べ、未来を展望する論文を一昨年度から昨年度にかけては紀要に書いたのに続き、今年度も『和歌山県立医科大学保健看護学部紀要』に、ルネサンスにおける古典の受容に関する研究を発表した。また平成22年12月には、京都大学文学部において、『オデュッセイア」受容に関する研究発表も行った。 古代ギリシアの喜劇の研究に関しては、「ギリシア喜劇とジェンダー」という論文が2008年11月に刊行された『ギリシア喜劇全集』別巻に所収され、この論文ではアリストパネースのいわゆる「女もの」と呼ばれる三編の喜劇、つまり『リューシストラテー」、『テスモポリア祭を営む女たち』、『女の議会』を取り上げて、服装倒錯とスピーチ(言語)さらにステレオタイプ(類型的描写)に焦点を当てて論じた。「女もの」三編においてはこれら三つの要素が相互補足的な関係にあり、最終的には祝祭へと収束するという結論を得た。2009年11月にアリストパネース『女の議会』の翻訳および解説を刊行したのに続き、喜劇全集に関しては、断片の翻訳も平成23年4月現在、初校のゲラを出版社に返却したところである。したがって数力月以内に上梓される予定である。 以上のような喜劇作品と翻訳の仕事に携わるなかで、喜劇とジェンダーについての研究意識もますます先鋭になってきている。さらに今年度の予定としてはかねてより執筆を依頼されている『オデュッセイア』についての書物およびエレゲイア詩集の翻訳を完成させるべく、鋭意研究中である。
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