平成20年度は、本研究プロジェクトの二年目であり、前年度の基礎作業を前提に、共観福音書(マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書)等の新約聖書中の物語文学において、マカリズム(幸いの宣言)が果たしている文学的機能に焦点を当てて分析を進めた。マタイ福音書とルカによる福音書に含まれるQ(語録)資料に出て来るマカリズムの語学的・釈義的分析については、新約聖書学の専門誌である『新約学研究』第36号に発表した。マタイによる福音書におけるマカリズムについては、マカリズムが出て来るマタイによる福音書の箇所すべてを厳密に釈義した上で、全体像を明らかにして一つの論文にまとめ、東北学院大学学術研究会発行の論集『教会と神学』第47号に発表した。マカリズムの物語的文脈における様様な機能についてのまとまった分析は今まで存在せず、本研究によって初めて提示された。特に、マカリズムの伝承を担った集団によって、それぞれのマカリズムがどのように解釈され、援用されたかについての分析は、本研究によって開拓された研究分野である。 研究成果の一部は、平成20年9月17-18日に関東学院大学で開かれた日本基督教学会第56回学術大会で口頭発表され、研究者諸氏と議論を重ねた。
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