研究概要 |
[連携研究者(所属)] 越智博美(一橋大学・商学研究科・教授)、三好みゆき(中央大学・法学部・教授) 本研究は、研究代表者、連携研究者計3名から構成され、大西洋をはさんだ概念の往来という視座から、「ケルト」言説の再検討を目指すものである。これにもとづき、松井は、夏期に10日間にわたってスコットランド国立図書館においてロマン主義時代における奴隷制やメディアに関する資料を収集し、これらを用いて、スコットランドの「国民詩人」としてのロバート・バーンズの位置づけとその変遷に大西洋を往還する視点が絡んでくるありようを考察し、論文の一部として発表した。また、ロマン主義時代スコットランドを代表するウォルター・スコットの小説と大西洋文化圏について、特に黒人や「インディアン」の表象の問題、および当時のメディアという観点から検討し、論文にまとめた。越智は、南部ナショナリズムとスコットランドやイングランとの思想の関係について引き続き考察した。Washington,DCの連邦議会図書館で収集した南北戦争に関係する資料を整理し、南北戦争の最中に出版された戦争小説Macariaで語られる南部の大義がどのように英国の文学を引用しているか、論文として発表した。三好は、「ケルト」の想像力に、言語・人種・民族精神にまつわる「科学」の言説をまとわせ、当時の英国さらにはアメリカにおいて社会批判・文化批判を展開したアーノルドの「ケルト文学の研究」の射程の解明、およびその抄訳・注解の作業を行った。その成果の一端は口頭報告を行い、現在は論文執筆と抄訳の仕上げ作業を行っている。
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