ヨーロッパの周縁ケルト文化圏が、EU の弱小国・地域支援と相俟って活性化し、文化的鎖国状態が続いたアイルランドも、特に文学的領域において目覚しい展開を見せている。その成果を通して、ケルト性が未来に向けて発信しているものを汲み取り、主流イングランド文化に対して見せるスタンスを探ることを目標とし、以下のように計画を進めた。 (1)イースター蜂起前後の女性たちを、コンスタンス・マーキヴィッチを中心に研究し、対イングランド意識を含めた「ケルト的」女性の生き方を追う。 (2)コンスタンスを初めとして、アイルランドとイングランドの狭間に生きたアセンダンシー階級の研究を通して、相互の意識と問題を知る。 (3)近年活躍する作家たちセバスチャン・バリー、ジョン・マッケナ等を読み、彼らが描くアイルランド女性像から、ケルト性を示す生き方を探る。 (4)英語文学圏で再評価が進むエリザベス・ボウエンを、アセンダンシーの代表と見做し、アイルランド女性とイングランド女性の特徴を併せ持つ点に注目、作家として、一女性として、その生涯を読み解き、上記ケルト性と関連付けて、総合的考察を加える。
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