研究課題
平成21年度、勤務先の海外研修制度によりローザンヌ大学に滞在した研究代表者新本は、11月12日-19日チューリヒのローレン翻訳センターにおいて英語、フランス語、ヘブライ語、オランダ語、カタルーニャ語、日本語へのR・ヴァルザー翻訳者による翻訳ワークショップに参加し、日本語への翻訳において可視化するヴァルザーの作品の批評可能性について報告を行った。また、新本は、11月15日には、バーゼル国際書籍見本市において、ヴァルザーの長編小説Geschwister Tannerが(もっともドイツ語に近い言語の一つである)英語と(もっともドイツ語から遠い言語の一つである)日本語に訳されるときに、それぞれもたらされる新たな読みの可能性が、いかに相反し、同時にいかに補完し合うものであるかについて、英訳者Susan Bernofskyと対談を行った。これらの活動を通じて、スイスにおいてヴァルザーの日本語訳の意義についての理解も得られ、2010年から2013年にかけて、新本および研究分担者ヒンターエーダー=エムデ・フランツを中心とした翻訳プロジェクト『ローベルト・ヴァルザー作品集』(全5巻、鳥影社)に対してスイスの文化財団Pro Helvetiaより財政支援が得られることとなった。2010年4月現在、校正作業中の第一巻『タンナー兄弟姉妹』は、2010年夏に刊行予定である。この作品の解釈可能性については、下記、津田塾大学紀要掲載の論文『「母の言葉」の喪失から生まれる「微笑む言葉」、「舞い落ちる」散文』において詳細に論じている。また、ヒンターエーダー=エムデ氏が『ドイツ文学』に書評を寄せた翻訳論Peter Utz : Anders gesagt-autrement dit-in other words.についても、新本による日本語訳がすすめられ、残念ながら研究プロジェクト期間に完成できなかったものの2011年に鳥影社より刊行予定となっている。並行して、ヒンターエーダー=エムデ氏は、博士論文以来の関係テーマである漱石作品のドイツ語訳の可能性について講演を行った。また、新本も、ローザンヌ大学における研究会において、ヨーロッパ文学における「自然主義」が日本に「輸入された」際に生じた翻訳上のねじれの問題について発表を行った。
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津田塾大学紀要 第42号
ページ: 135-163
Neue Beitrage zur Germanistik Bd 8/Heft 1, 2009 第8巻/1冊
ページ: 170-173
福岡国際文化セミナー2008続・日本の文化と心。福岡ユネスコ協会第45号。The Fukuoka Unesco Association 45
ページ: 43-49