平成21年度に遂行した本研究計画の実績は、以下の項目に分けて報告することが出来る。 1、本研究計画を遂行することで得られた新たな知見を十全に反映した全260頁の研究書『シュトゥルム・ウント・ドラング研究』を刊行した。本邦においては、この研究領域に関する研究書は少ない。 2、学会発表は2回(研究会での発表を含めると4回)、ドイツ語論文を含めて2編の論文を発表し、本研究計画によって得られた新たな知見を遅滞なく公表した。 3、本研究計画を遂行することによって開拓された新たな研究領域「西欧文化史の比較研究」を遂行するために、新たに学際的な研究グループを結成した。これは英文学、アメリカ文学、フランス文学、美術史、そしてドイツ文学を専門とする研究者によって結成されている。 4、平成21年度に遂行すべき研究テーマ「アルザス・ロレーヌ地域におけるシュトゥルム・ウント・ドラング」が予想以上に進展したこと、および、平成22年度に遂行すべき「音楽史におけるシュトゥルム・ウント・ドラング」に関する資料収集と分析が進捗したことをうけて、さらに本研究計画を深化きせることが出来た。これにより、本研究計画を発展的に継続することが可能となった。 5、バルト海沿岸地域におけるドイツ語文化とケーニヒスベルク、そしてドイツを結ぶ文化的な移動と接点に着目して、極めてドイツ的といわれるシュトゥルム・ウント・ドラングの発端が、むしろ周縁地域、植民地域にあることを指摘した。これにより「周縁知地域におけるアイデンティティ」という、これ以後に取り組むべきテーマと対峙した。これは本邦のみならず、中国文化、西欧文化の研究においても重要なキーワードとなっているものである。
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