ドイツ文学史における概念「シュトゥルム・ウント・ドラング」(本邦では「疾風怒濤」)は、とりわけ英仏文学史、音楽学、美術史にまでその使用が拡散している。その際、18世紀の同時代における芸術諸分野でのいわゆるシュトゥルム・ウント・ドラング的な革新的傾向の作品群の同時的成立が指摘されているのである。そこでヨーロッパ文化史全体を視野に入れつつ、ドイツ文芸学において狭義の時代概念として捉えられてきたシュトゥルム・ウント・ドラングをむしろ様式概念として新たに定義・理解するために、この概念の発生と変遷の歴史を綿密な文献学的な作業を通じて明らかにするとともに、関連諸芸術分野における同時代的・類似の現象を考察し、学際的・国際的なシュトゥルム・ウント・ドラング研究の基盤を整備する。
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