研究最終点度にあたる平成21年度の目標は都市論の整理、作品の評価とジェンダーについての考察、マスメディアとジェンダーという観点からガブリエレ・テルギット論の完成、および本課題の研究成果として著作の準備に取り掛かることであった。 年度前半はベルリンの都市文化の構成要素としてのマスメディアと女性ホワイトカラーに注目し、ヴァイマール共和国時代に活躍していた詩人マーシャ・カレコと小説家ヴィッキィ・バウムを取りあげ、研究ノート「ベルリンとふたりの女性作家-マーシャ・カレコとヴィッキィ・バウムについて」をまとめた。カレコに関しては、都市のライフスタイルを特徴づけるホワイトカラーの生活を表現している詩を分析した。一方当時のベストセラー作家のバウムは、ベルリンの大出版社ウルシュタインが戦略的に売り出したメディア・スターである。バウムについてメディアの戦略と小説の制作およびジェンダーとの係りを考察した。 年度の後半では著作の準備に入った。第5章からなる予定の論考にうち3章を執筆した。第1章「大都市ベルリンのイメージ」では、当時のベルリン体験が女性の視点からどのように文学作品の中で描写されているかを考察した。第2章「ベルリンで働く-ベルリンOL」では、ヴァイマール共和国時代の女性ホワイトカラーが主人公の文学作品の分析を行い、第3章「出版メディアとモガンガール」では当時のベストセラーが生み出される仕組み、およびその作品や女性像の特徴、またマスメディアをテーマにしたテルギットの小説を題材に、流行とマスメディア、都市ベルリンとの関係を論じた。なおこれらは残りの章を執筆後、勤務校で出版されている「フェリス・ブックス」シリーズの1冊として今夏上梓される予定である。これにより本研究の成果としてヴァイマール共和国時代の女性による文学の紹介と彼女たちの表現とシェンダーおよび都市の関係を示すことができると考えている。
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