科研費助成研究「16・17世紀イングランドにおける地図製作とシェイクスピア演劇」(平成15年~18年)における研究を進めていくなかで、イングランド人が地中海貿易を通して経験した異国人との遭遇によって、いかに自己成形(Self-fashioning)を果たしたかの問題が非常に重要であることに気付かされた。ムーア人、モロッコ人、トルコ人、スペイン人、ユダヤ人等、他者との遭遇・接触が、イングランド人という国民のアイデンティティ形成にいかに大きな役割を果たしたかは、是非とも研究し解明すべき問題であると思われる。その際、英国地図同様、人々が見知らぬ土地を思い描くにあたって重要な文化表象であった地中海地方の「地図」が、シェイクスピア演劇を考察するうえで、とても興味深い対象となるものであるということには強い確信を抱いている。今回の科研申請は、平成15年~18年度において遂行してきた「地図」の研究を、英国のみならず地中海地域へと拡大するものであり、現在、出版準備を進めている書物『英国地図製作とシェイクスピア演劇』の姉妹編となる書物『地中海地図とシェイクスピア演劇(仮題)』を執筆するための研究基盤となるものである。
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