ベルリン・ダダイズムの中心的な芸術家のグロッスとメーリングの共同作業に注目し、作品の分析を行った。一方の極に、伝統を破壊する新しい技法、すなわち同時進行の原理や、独特のコラージュ技法を駆使している作品があるのに対して、他方の極には、伝統的な技法を継承し、大衆的な歌謡や一枚絵に近い方向があることが確認できた。ダダイズムの芸術家が否定したのは、旧来の芸術評価における固定的なカノン(規範)である。これに対して彼らは、民衆的・通俗的な芸術の意外性・革新性を取り入れて、芸術の在り方を転換しようとしたのである。ダダイズムの生産的な面を明らかにした点が研究の大きな成果である。
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