日本では北アイルランドの小説は演劇と詩に比べて研究されることが少ないが、ジョージ・A・バーミンガムとグレン・パタソンを中心に北アイルランド小説の研究を続け、その普遍的な意義と価値を解明した。バーミンガムの多くの作品は、深い意味を持たない軽いユーモア小説と見なされる傾向にあるが、実際には彼の深いキリスト教的寛容と博愛に基づいて、人間同士の融和に必要なものは何かを訴えかけている。一方、パタソンの小説は、北アイルランドのナショナリスト(アイルランド派)とユニオニスト(イギリス派)の対立というローカルな問題を描く一方で、北アイルランドの持つコズモポリタン的な普遍性を示しているということを実証した。
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