研究概要 |
中国・唐代の著名な詩人であり、中国文学のみならず我が国の文学にも多大な影響を与えた杜甫の詩、とりわけ彼が用いた詩語の全体像を正確に理解するための研究を実施した。 1, 基礎的作業として、杜甫の詩の一字索引である『杜詩引得』(哈仏燕京学社特刊14,1940。台北影印1966)の不備を全面的に補訂し、2年間にわたる検討・補訂作業の成果を「『杜詩引得』補訂附『杜詩引得』詩題一覧」(北海道教育大学札幌校漢文学研究室、2008)として一冊にまとめた。同時にこれをホームページ(「北海道教育大学札幌校漢文学研究室」)上に公開し、さらに中国における杜甫研究の状況を知るために必須の「杜甫研究学刊(旧・「草堂」)」の最近号までの総目次についても一覧を作成し、これもホームページ上に公開し、杜甫及び唐詩研究者に提供して研究の便をはかった。 2, 既存の索引類に加えて上記「『杜詩引得』補訂」を活用しながら、まず定義があいまいな「詩語」という語自体の成立について考察を加えて論文「『詩語』という語について」として発表し、ついで用例こそ多くはないものの、逆にそのことによって杜甫の詩の特質を示し、あるいは杜甫の詩を理解するために分析が不可欠である語でありながら着目されることが少なかった詩語、「因人」、「渾渾」の語を抽出して、これらの語について先行用例と唐代の他詩人の用例とを比較し、具体的に分析して論文「杜詩『因人』考」及び「杜詩『渾渾』試解」として発表し、杜甫の詩の解釈に新たな見解を提出した。これらは杜甫の詩語研究を進展させるための基盤となる成果であり、今後の研究にもつながるものである。
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