研究概要 |
平成19年度には当初の予定にしたがひ、大叙事詩マハーバーラタの叙述の枠組みの研究に専念した。同叙事詩の叙述構造は複雑をきはめてゐるが、叙述の枠組としてもっとも重要なものはヴァイシャムパーヤナの語り(V)とウグラシュラヴァスの語り(U)であり、両者の基本性格および相互関係の解明には叙事詩のプロローグ部分とエピローグ部分の構造、この両部分の説話内容、それらの成立過程の分析が必要となる。平成19年度には内外の印度叙事詩研究者による先行研究を充分に踏まへ、マハーバーラタおよび他の関連印度語テキストの精査を行ひ、マハーバーラタの叙述構造についての考察を進めていった。その結果1、枠組Vが枠組Uに先行すること、2、ある段階のマハーバーラタはアースティーカ物語から始まること、3、その後パルヴァサングラハパルヴァンが添加されたこと、4、枠組Vのみからなる古いマハーバーラタは現行テキストの第1巻第54章から始まるとと、5、枠組Uは現行テキストでは第4章パウローマパルヴァンから始まるが、本来は第14章のアースティーカパルヴァンから始まることなどを確認した。これらの研究成果は、年度末にConsiderations on the Narrative Structure of the Mahabharata(Studies in Indian Philosophy and Buddhism 15,Tokyo 2008 March)といふ論文にまとめることができた。なほ平成19年度の研究をとほしてマハーバーラタの叙述構造の解明には附篇ハリヴァンシャの構成と形成史の調査が不可欠であることを再確認した。
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