平成21年度は20年度の研究成果を踏まへ、大叙事詩マハーバーラタ(Mbh)と附篇ハリヴァンシャ(Hv)と大叙事詩ラーマーヤナ(Ra)について、成立時や相互影響等について調査考察を進め、ほぼ以下のごとき成果をあげることができた。(1)Hv第3部バヴィシャットの主題は、シュンガ王朝プシャミトラ王(紀元前二世紀)のアシュヴァメーダ祭への批判であることを再確認し、この研究成果をthe 14^<th> World Sanskrit Conferenceにおいて"Janamejaya and Pusyamitra"と題して發表した。(2)プシャミトラの祭祀擧行およびシュンガ王朝からカーヌヴァ王朝への交替のいきさつは、マツヤプラーナとヴァーユプラーナの一節でも暗示されていることをつきとめ、調査研究成果を"On the dynastic transtion from the Sungas to the Kanvayanas"という論文にまとめた。(3)Raの第7巻Uttarakandaには、Mbhがさまざまな形で影を落としていることが判明した。(4)したがってMbh主要部分の成立はおほよそのところ、Ra7の成立に先立つものであることが推測される。(5)逆にRaの主要部2-6には、Mbhとの直接的聯関は認められず、Mbh的世界とは別の独特のRa的世界が提示されていることが、ほぼ判明した。(6)Ra7の王統譜ではイクシュヴァーク中心史観が提示され、この史観はMbhの王統譜のパウラヴァ中心史観に対抗するものであることが推測される。上記(3)(4)(5)(6)については、平成22年にさらに綿密な調査研究をしたいと望んでいる。
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