研究概要 |
カシミールの『ブリハット・カター』(BK)伝本、『ブリハット・カター・マンジャリー』(BKM)と『カター・サリット・サーガラ』(KSS)は同一の原拠を基に作成された説話集で、全18巻よりなる。その枠物語の内容は次の三部分-I.BK起源譚、II.ウダヤナ王行状記、III.ナラヴァーハナダッタ(Nv)王子行状記-によって構成される。BKMとKSSは同一原拠によりながらも、物語の構成に関して、各所に不一致がみられる。特に枠物語の中心となるIIIには、特に大きな違いが見られるのが、主人公(Nv)の誕生の経緯(第4巻)と青年期から結婚の経緯(第7,8巻)、そして様々な冒険を経た後に、半身族ヴィディヤーダラの転輪王となったNvが親族一同の前で、自らの半生を語る場面(第18,19巻)である。以下の研究計画に基づき、両伝本の成立の背景を探る。 (1)基礎研究(テキスト講読):二伝本間に相違の見られる以上の巻を中心にBKMとKSSの二テキストを比較しつつ読み進め、両本の相違を明確にする。その際、今は失われた原BKを最もよく伝えるとされる『ブリハット・カター・シュローカ・サングラハ』(BKSS)をも併せて対照しながら比較分析の基礎データを収集する。講読は、若い巻数から順次進めることとする。 (2)関連文献・資料の調査と収集:(1)写本調査:BKMとKSS、BKSSの異写本を収集するために、Webや国内で閲覧できる写本カタログの調査、および海外の主要図書館・研究機関での調査を行う。(2)関連論文・研究の調査を行い、(1)とともに必要に応じて随時それらを複写・購入する。 (3)現存テキストの校訂:校訂作業についてはできうるならばBKM全体の校訂が望ましいが、本研究では研究対象となる巻に限定して作業を行うこととする。(1)のテキスト講読と平行して、入手できた写本を参照しながら、テキストの校訂作業を行う。
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