グナーディヤ作『ブリハット・カター』(2.4世紀?)は、原本は失われ、後代の諸伝本が現存する。本研究では、現存する唯一の完本で、いずれも11世紀にカシミールで成立したクシェーメーンドラ作『ブリハット・カター・マンジャリー』とソーマデーヴァ作『カター・サリット・サーガラ』の枠物語の構成と挿話を比較分析した。その結果、共通典拠であるカシミール・ブリハットカターの忠実な簡約版を作成したクシェーメーンドラに対し、ソーマデーヴァは主人公の王子の活躍に重点を置き、内容に大きな変更が生じない程度に作品の再構成を試みたことが分かった。
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