本年度は、前年度に引き続き、『世界日報副刊』の巨録作成の基礎作業を行った。また北京大学図書館に赴き、1920年代の北京を代表する学生自治会発行の雑誌であった『燕大週間』の調査を行い、前年度に行った上海図書館における同誌への調査とあわせて、ほぼ全巻の目緑を調査し終えることができた。『世界日報副刊』、『燕大週刊』は、当時の北京の文学界にあって大きな役割を果たしたにもかかわらず、新文学の主流から外れていたため、これまで目録等がなかった。このため、この作業は、今後の中国現代文学研究の発展にとっても、一定の役割を果たすことであろう。 それとあわせて、当時燕京大学の学生であった、詩入の劉廷蔚が同誌に発表した詩作を収集した。劉廷蔚は、当時の北京詩壇にあって、人気のあった詩入であるが、彼の詩を初出雑誌によって収集することには、大きな意味があると思われる。 また今年度は、前年度より収集した資料を活用して、干?虞の詩作活動について、中国文芸研究会に於いて報告を行い、それを論文にまとめた(現在査読審査中)。于?虞は、当時、燕京大学学生であり、『燕大週刊』の編集にもたずさわっていた。このほかにも、徐志摩や聞一多らの活躍がクローズアップされることの多い『晨報・詩鐫』の活動にも深く関わっていた。さらに1926年に于?虞は、無須社の主要メンバーとして、沈従文らと『世界日報・文学週刊』も発行している于?虞は、当時の北京の文学界において、特に文学青年たちの中心的な入物であったにもかかわらず、現在はすでに忘れ去られた観のあると言えよう。今年度に行った報告では、3.18事件を挟んで創作された于?虞の詩の特徴を論じ、彼が中国現代文学史上に果たした役割を再評価した。
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