1. 原スカンダプラーナ(6〜7世紀成立)に含まれるヴィンディヤ山の神話サイクルは、「戦闘女神」の中核となったこの女神の神話を詳しく語るもっとも古い文献である。また、もう一柱の重要な女神-水牛の魔神を殺す女神-の神話を融合し、シヴァ信仰の枠内で「戦闘女神」という概念の成立を示す最古の資料であり、その後、この文献の影響を受けて、「戦闘女神」を最高神とする神話・教義を打ち出すデーヴィー・マーハートミャ(8〜9世紀成立)が成立するという点でも、非常に重要な文献である。研究代表者は、グロニンゲン大学インド学研究所を中心として実施されている原スカンダプラーナ校訂・研究の国際的なプロジェクトの一環としてこの神話サイクルの校訂作業に携わり、平成19年度までにすでに基本的な作業を終えている。20年度には、8月にグロニンゲンで実施されたプロジェクトのセッションにて、校訂に用いる写本の取捨選択、写本間の関係について、これまでの成果に基づいた見直しが行われ、その後新たな方針にしたがって、女神神話サイクルの校訂テキストの全面的な改訂を行い最終稿を完成した。これは当研究課題の主要目的の一つであり、21年度にスカンダプラーナ第3巻として出版する予定である。2.このスカンダプラーナ第3巻の具体的な出版計画について、3月にグロニンゲンにて、インデックス用のプログラム作りとタイプセッティングを依頼する張本博士(ハンブルグ大学NGMCP研究員)、プロジェクト主幹のバッカー教授、及び出版社との打ち合わせを行った。また、当初この巻に含む予定であった、当研究課題を含めた女神信仰の形成史研究については、ページ数や研究の進行状況などから、この第3巻とは独立した単行本としてまとめることになった。3.謝金を使って、スカンダプラーナの写本のうちRとA2のデジタル化を行った。これによって重要な写本のデジタル化はほぼ完了した。4.当初20年度に計画していた女神に関する写真資料の残余分のデジタル化は、21年度に実施する予定である。
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