1.研究目的の一つである原『スカンダプラーナ』のヴィンディヤ山女神神話サイクルの校訂出版について、20年度までに校訂テキストの全面改訂を完了したので、本年度は英語のシノプシスを全面的に改訂し、またこのサイクルの構造、写本の相互関係、校訂上の問題点を序論としてまとめた。以上はSkandapurana Volume IIIとして21年度中に出版予定であったが、9月に京都大学で開催された第14回国際サンスクリット学会の事務局員として開催準備のために作業が遅れ、これから英語の校閲・インデックス作成を行い22年度中に出版する予定である。2.上記の神話サイクルにおけるヴィンディヤ山の女神が、『デーヴィーマーハートミャ』ではヴィンディヤ山の神格という地域性を放棄し、より包括的な<戦闘女神>として確立すること、さらに上記の文献では「世界の母」として女神たちの最上位に位置したシヴァ妃パールヴァティーと地位を逆転して、女神たちの最上位に位置づけられるのみならず、処女性という特質から、配偶者となる男性神をもたない真の「最高神」となることを解明した。この点について、<戦闘女神>の形成史の概略とともに、日本語の論文にまとめた。3.<戦闘女神>の最高神化を理論的に支えたのはシヴァ教からとりいれられたシャクティ(宇宙に偏在する力)という概念であり、女神の最高神化の理論面の研究にはシヴァ教教理の理解が不可欠である。そのため、来日中の学振外国人特別研究員2名を交えた5名の研究者有志(思想、儀礼、神話各々の専門家)で、9月に九州大学にてシヴァ教研究会を開催し、特に近年研究が進んでいる初期シヴァ教について討議した。4.謝金及び外注にて、『スカンダプラーナ』以外の、これまでに収集した関連プラーナ文献写本マイクロフィルムのデジタル化をおこなった。
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