本研究課題は、北京の中国国家図書館が所蔵する明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』、ならびに、今日の貴州省に残存する地方戯『鸚哥記』『太子売身』について、校本・訳注の作成も含め、その起源や発展の過程、三者の関係等を総合的に考察することを目的とする。また、平成19年度の研究計画は、(1)中華人民共和国の北京・中国国家図書館に出張し明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』について調査する、(2)中華人民共和国・貴州省に出張し、地方戯『鸚哥記』『太子売身』について調査する、(3)明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』をデータ化する、(4)地方戯『鸚哥記』『太子売身』をデータ化する(5)明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』の版本としての特徴、ならびに地方戯『鸚哥記』『太子売身』のテキストの特徴を明らかにする、(6)潜龍馬再興を扱うその他の語り物文芸、詩賛系文学との関連について調査する、という六点が主たるものであった。 これらの計画のうち、(1)と(2)については中華人民共和国に出張して明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』ならびに地方戯『鸚哥記』『太子売身』のテキストを入手した。また、(3)については、補助研究員によって明代通俗小説『潜龍馬再興七姑伝』のデータ化がほぼ完了した。また、(5)についても一定の成果が得られたので、平成20年5月に東方学会が主催する東方学者会議において成果の一部を発表する予定である。ただ、(4)地方戯『鸚哥記』『太子売身』のデータ化については未だ緒についていないので、(6)潜龍馬再興を扱うその他の語り物文芸、詩賛系文学の調査とともに、平成20年度以降の課題としたい。
|