本年度も、『太平広記』『古小説鉤沈』の字句の校勘と厳密な読解を行いながら、中国古小説の話題事項集成の研究を進める目的で、以下の作業を実施した。 1.研究補助者の協力を得て、昨年抽出した、400巻分の一話ごとの話題・あらすじを構成する事項を整理する作業を行った。 2.『太平広記』許自昌本との字句の異同を検討した。 3.『太平広記』巻291「神一」部、巻292「神二」部の訳注、『古小説鉤沈』所収『幽明録』『甄異伝』の訳注作業を進めた。 4.研究会メンバーである留学生の研究補助者の協力のもとに南開大学の寧稼雨教授から受けとった六朝小説に関するデータをもとに、話題事項を日本語に訳しながら整理した。 5.『太平広記』500巻全体の話題事項を抽出し、各事項について検討した結果をパソコンに入力して整理するとともに、約7000話のあらすじを作成する作業を行った。魯迅輯『古小説鉤沈』についても、原典との交換作業を行いつつ訳注を進め、同様の作業を行った。 6.具体的な話題事項の分類として、『太平広記』巻316「鬼一」部から巻355「鬼四十」部までについて、(1)鬼(幽鬼)の相貌、(2)出現の仕方、(3)出現の理由、(4)人との交流の仕方、(5)人を害する行為、(6)人を利する行為、(7)発揮する超能力、(8)冥界の組織、(9)人の鬼(幽鬼)に対する対応、(10)消滅の仕方、(11)消滅の理由、などの項目に分け、該当する原文(日本語訳を付す)を抽出した。これで、鬼については、古小説から同様の話題事項を収集する基準が完成したことになる。
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