地図改訂の作業の最終年度として、前年度以来蓄積した実地踏査や文献調査による資料を、同じく前年度来試行検討してきた新たな図式によって地図上へ反映するための、実質的な作業を続行した。 初版刊行時には利用できなかった各種の新資料を駆使した地図の全面改訂の作業を続行し、改訂版刊行時に掲載を予定する全三十四図幅のうち、三十枚近くの図幅について基本的な作図を終えることができた。2008年8月、9月、11月の3度にわたって上海現地での現地踏査を行った。今年度は主に虹口区、楊浦区など市街地北東部の踏査に労力を注いだ。これと並行して、上海市档案館などでの関連資料の調査収集を続行した。 旧版刊行以後、現地当局の文化財行政の進展により、各レベルの文化財に指定された建築物の数は飛躍的に増加している。最新の「上海市第四次優秀歴史建築リスト」では、新たに230件の歴史的建造物が市当局によって追加指定されている。これに加えて、上海市文物管理委員会からは635件にのぼる「上海市不可移動文物」のリストも新たに公表された。これらの物件について、現地調査ほかの資料により、できうる限り正確な位置と現状を図上に提示する作業を進めた。 地図作成の参考資料とすべく、村松一弥氏より寄贈をうけて首都大学東京中文研究室が所蔵する歴史的なテレビ放映映像の目録化を進め、これと並行してライブラリー中に含まれる上海の関する各時期の映像を調査検討した。 また、2008年8月には、前年度の来日以来資料交流を行っているエコール・ノルマル・シューペリウール(東亜研究院)のクリスチャン・アンリオ教授をリョン第二大学に訪問して、同氏が構築中の上海地図データベースに関する学術交流を行った。
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