厨川白村著作が及ぼした影響について、中国語圏(大陸・中国、台湾、香港)全体を視野に入れて考察、分析したものであり、一度衰退した大陸に対し、台湾では新しい翻訳者を獲得して、継続して普及した原因と方法を考察した。さらに、中国における厨川白村著作の回帰と再評価の特徴が、単に西洋の「近代化」を導入するための道具としてあったばかりでなく、マルクス主義・社会主義芸術論の浸透により、厨川白村文芸論は文芸心理学と文芸社会学の合流・結合がなされた文芸理論として高く評価され、「厨川白村研究」「厨川白村文芸思想研究」という新しい語彙と領域が出現していることを提示した。
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