・前年に引き続き、情報交換・情報収集用、文献整理用のパソコン・システム、及び経年劣化を受けている破損し易い貴重な文献の書影等のデータを蓄積する為の画像デジタル処理機材を、報告者の所属機関の個人研究室に設置し、研究環境を整備した。 ・「カーマ・シャーストラ」関連文献の調査・収集を遂行し、それと並行して資料の解読・同定を進め、資料相互の関係を闡明しつつ、整理した。わが国の「カーマ・シャーストラ」の発見と受容に力点を置き、サンスクリット原典からの最初の和訳『カーマ・スートラ』の翻訳者たる泉芳〓に関して特に重点的に調査を進め、泉芳〓氏個人の「カーマ・シャーストラ」の発見・受容の内実を資料に基づいて検証し、それが日本近代に果たした意味・役割をさらに重層的に考察した。文献に関しては、購入・複写を通じて網羅的に収集して、より精度の高い著作目録の作成を目指した。その一環として、泉芳〓氏が館長を務めたこともある大谷大学図書館へ出張調査するなどして、その成果を網羅的な「泉芳〓教授著訳書論文目録-「カーマ・シャーストラ」受容史構築のために(2)-」としてまとめて発表した。懸案であった貴重な文献の書影の一部も同論攷の内に公表することができた。 ・「カーマ・シャーストラ」の一例としてカーリダーサの名作戯曲『シャクンタラー姫』に注目し、泉芳〓氏や河口慧海氏などによるその受容史の実態を精査し、その成果を論攷「戯曲『シャクンタラー姫』の和訳-「カーマ・シャーストラ」受容史構築 のために-」としてまとめ発表した。
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