研究概要 |
本研究の目的は,スペイン国内に残存する中国近世白話文献のうち,特に学術的価値が高いと判断される8種類の作品について,全文の電子テキストを作成し,自身のホームページ上で公開することにより,各々の作品の文学史上における位置を確定するための基礎資料を提供することである。 平成20年度の目標は,前掲文献についての関連資料を収集し,本文を相互に比較対照する作業を行った後,校訂を完了したものから順次電子データを公開するとともに,関連する版本との比較検討を通じて明らかになった事実について報告文を執筆し,研究の中間報告を行うことであった。 これらの目標のうち,第1に掲げた,作品毎の全文電子データの公開については,各文献ともに全体の分量がかなり膨大であり,当初予測した以上の時間と労力を要するため,実際に公開にまで踏み切れた文献は,トレド聖堂参事会図書館所蔵に係る『明解増和千家詩集』,及び,スペイン国立図書館所蔵『雷峰塔』の,2点のみに止まった。しかし,残る文献についても,現在鋭意校訂作業を進めており,次年度の公開に向けてできる限りの準備を行っているところである。 次に,第2の目標に関しては,当初は学内外の学術誌に数篇の論文を執筆するに止める予定であったが,これまでに得られた研究成果を可能な限りまとめた結果,2008年秋に,関西大学出版部から,『漢籍西遊記』と題する著書を上梓することができた。これによって,本研究の成果の一部を広く一般に示すことができたものと考えている。
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