本年度も初年度と同様に9月にウズベキスタン(タシケント東洋学大学)とキルギス(キルギス民族大学)、また12月にカザフスタンにおいて現地調査を行い、中央アジアの大学生に対するロシア語文法能力に関する筆記試験を用いた調査を実施すると同時に、現地のウズベク人、キルギス人、カザフ人等の日常会話におけるロシア語を観察してその特徴を記録した。12月下旬のカザフスタンにおける調査では前年に協力してくれたカザフスタン国立民族教育大学のカラジャノヴァ専任講師がこの直前に民間企業への転職のため急遽大学を退職したことにより同大学における学生のロシア語文法能力調査が不可能となったが、幸い同氏の周旋によりカザフスタン国立カザフ民族大学(ソ連時代の国立アルマアタ総合大学)の日本学講座の協力を得ることが可能になったため同大学東洋学部の学生を対象にロシア語文法能力測定のための筆記試験を課すことができた。このような経緯で今回の調査において初めて国立カザフ民族大学との交流の端緒を持つに至ったが、その結果、同じくアルマトゥに位置してソ連時代から存在し続けている国立大学であっても国立民族教育大学ではほとんどの授業をロシア語で行っている(それゆえ、同大の学生にはロシア語学校出身者が多い)のに対し、国立民族大学ではほとんどの授業をカザフ語で行っている(それゆえ同大の学生のほとんどがカザフ語学校出身者である)という差異が存在することが明らかになった。また、このことから予想される通り、同じアルマトゥ在住のカザフ人学生であっても後者にはロシア語の能力がかなり低い学生が在学しており、民族間共通語としてのロシア語の保存という観点から見ると、現時点ではまだかなりの程度差があるとはいえ、カザフスタンにおいてもウズベキスタンと同様の衰退現象が起こる兆しがあることを知ることができた。
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