一般言語の等位構造と一致現象の文献を読み、知見を深めた。この2つを結ぶ重要な鍵であるラマホロト語の文法書を出版した。付随構造から等位構造に変化する過程についての、独自の見解を持つに至った。ここでの最大の問題は、withからandへは移動が関わっていないのになぜ文法化が起きるかということであった。解決の鍵は剥き出し句構造における、最終的な投射にある。最後に等位語が投射すれば等位構造になり、第一等位要素が投射すれば付随構造になる、という前提に立ち、この違いが文法化の実態であるという仮説を得た。これを論証した論文を書き、学術雑誌に応募して、現在審査中である。この内容は2月にレキスコン研究会で口頭発表した。またこの論文では、付随構造から等位構造への変化は突然起こるのではなく、中間的な構造も存在することを指摘し、この変化は構文が変化するようなもので、詳しく見れば独立した素性の変化が含まれていると論じた。 研究発表としては、論文が2本、学会発表が3件である。7月に上智大学言語学会でパネリストとして招待され、形態論の他領域との接点についての、筆者の考えを発表し、これは会報として出版された。ここではラマホロト語の等位構造の内部での一致現象にも触れ、これが統語論と形態論の両方に関わる現象であることを論じた。また3月に出版された論文集では、日本語の敬語を一致現象として捉えるた場合、どんなプロセスが関わっているかを論じた。ここでも一致現象を扱う一般理論とはいかにあるべきか、一致を引き起こすものと引き起こされるものの関係はいかにあるべきか、といった問題で、主要部と指定部の関係が重要であると論じた。
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