研究課題
昨年に引き続き、一般言語の等位構造と一致現象の文献を読み、知見を深めた。また、一致現象と文法化の研究の一環としそ、日本語の連体形の研究を始めた。連体形を名詞化された節とみなし、その主要部としての「る」が、その統語環境によりどのような歴史的変化をとげたかを考察するのがテーマである。具体的には「のだ」の環境、関係節、及び単純時制文という環境の違いで、「る」が再分析、音形脱落、そして枝切り落としを受けたと論じ、文法化における統語構造の重要性を明らかにする。連体形が主格を与えないことが、一致の欠如と見る意見もあるが、連体形の研究を進めることで、この意見の妥当性が判断され、ひいては一致現象の理解が深まり、表題研究の進展に多いに寄与すると期待される。なお、この研究は来る6月の日本言語学会のワークショップで、コーネル大学のホイットマン教授と筑波大学の柳田教授とともに発表の予定である。研究発表としては、論文が2本あり、ともに形態論についての論考である。Oxford Handbookでは複合動詞を扱った。多くの複合動詞は動詞が動詞句を選択する構造を取るが、一部の複合動詞においては、等位構造の可能性があると論じた。Studies in English Literatureに載ったものは、形態論についての理論的提案を行った書物の書評だが、ここでも等位構造の重要性を指摘した。対象の本では形態構造は全て非対称的だとされるが、連濁を起こさない日本語の等位複合名詞はこの反例になると指摘した。これらの論文の執筆、出版により、等位構造への理解がより深まった。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 備考 (1件)
Studies in English Literature 50, English Number
ページ: 255-263
The Oxford Handbook of Japanese Linguistics
ページ: 320-347
http://info.ibaraki.ac.jp/scripts/websearch/index.htm