昨年度までの、等位構造、一致現象、付随構造の分析と考察を更に深化させることができた。まず成果発表として、これまでの研究の成果を5月の英文学会で発表した。ここでは統語変化についてのシンポジウムの企画責任者となり、他の2名のパネリストとともに、文法化の定式化で発表及び討論をした。またラマホロト語とワルマン語の等位一致現象を比較し、文法化の違いを探った。これらは2つの論文として執筆し、学術雑誌掲載に向けて準備中である。 また昨年度、一致現象と文法化の研究の一環で、日本語の連体形の研究に着手したが、これも更に発展させた。連体形を名詞化された節とみなし、その主要部としての「る」が、その統語環境によりどのような歴史的変化をとげたかを考察するのがテーマである。その中では文法化における統語構造の重要性を明らかにすることができた。また、関係節における主語の格付与交替を考察することにより、連体形での一致現象の理解が深まった。なお、この研究は6月の日本言語学会と3月の慶応言語学コロキアムで発表した。これも学術雑誌掲載に向けて準備中である。 もう1つのテーマとして、日本語の複合動詞の研究を東北大学の小川芳樹准教授と行い、ここでも文法化について考察した。主要部移動という統語的移動が、動詞を階層的統語構造のどの部分に移動させるか、という違いで、文法化の度合いが異なる仮説を展開した。これにより、統語的操作と歴史的変化の関係で、新たな見地が開けた。これは研究会と学会で発表し、論文も学術雑誌掲載に向けて準備中である。 形態論の研究である、日本語の述語のアクセントの課題は、2つの学会発表を受け、その論文が学術雑誌(Lingua)に掲載予定である。
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