2007年12月ひつじ書房から「上代語の能格性について」『日本語の主文現象』長谷川信子編、MIT Working Papers in Linguisticsから"Miyagawa's(2008)Exceptions: An Ergative Analysis"を出版し、さらに共同研究者であるコーネル大学教授John Whitman氏と2007年6月筑波大学で、2008年3月コーネル大学にて上代語と能格に関する共同研究を実施し、'Alignment and Word Order in Old Japanese'というタイトルで論文にまとめた。(Journal of East Asian Linguistics現在審査中)内容は万葉集をデータベースとして、上代語の形態的、統語的特徴を広範に調査した。現在まで、日本語は対格言語であると信じられてきたが、本研究の独創性は上代語に能格言語-特に活格類型を持つ言語-特有の形態的、統語的特徴があることを示したことである。現代語の主語標示「が」は主格であることは議論の余地がないが、上代語の「が」は活格として機能していたことを示した。「が」はSilverstein(1976)の名詞句階層に従い、階層の上位、すなわち、代名詞や固有名詞に「が」が使われれ、階層の低い無生物主語には使われない。これは「が」が活格である根拠のひとつである。さらに、「が」は動詞の動作性と関連し、「が」は動作性の強い動詞に表れ、動作性の低い動詞に表れない。この特徴も「が」が活格であることを支持するものである。さらに、本研究では、万葉集に広く見られる、接頭辞「イ」と「サ」が上代語が活格型能格言語であった強い根拠になることを示した。
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