研究概要 |
20年度はオーストロネシア語族などの比較をとおして日本語の格と語順の関係とその史的変化を調査し、言語変化の一般化に関する理論的仮説からすでに消滅した原始目本語の格システムや構造的特徴を再建することを目的に研究をすすめた。古代日本語が現代語と類型学的に異なる、いわゆる「活格型言語」であり歴史的変化の過程で「主格型言語」に変化したという「活格仮説」を提案し、この仮説の実証的研究を行っている。オックスフォード大学で、イギリス人文科学研究振興会(Artsand Humanities Research Council, UK(AHRC))の助成金による古代目本語研究のプロジェクト(ビャーケ・フレレスビッグ、オックスフォード大学東洋研究科教授統括)の外部メンバーとして2008年9月から共同研究をすすめている。またコーネル大学John Whitman教授とは、日本語の格と語順の変化による言語変化のメカニズムに関する共同研究を行っている。20年度の研究成果は'Alignment and WordOrderin Old Japanese'(Journal of East Asian Linguistics)から2009年度中に出版される。また、国内では「人称と活格類型一上代目本語の代名詞体系の観点から」『ウチとソトの言語学』(開拓社、印刷中)に研究成果をまとめた。すでに研究の蓄積のあるインド・ヨーロッパ語族でも活格類型から主格類型への変化が多くの学者により提唱されているため、日本語における「活格仮説」が正しいとすると、言語変化を日本語独自の変化としてではなく、一般的変化の中から日本語を捉えることが可能になる。
|