研究概要 |
研究初年度である平成19年度は,「省略」の用法について,実際のテクストデータを分析し,検証を進めていった。その際,日本語,ドイツ語の翻訳テクストの間の比較を中心として分析を進めた。それと平行して,「省略」というコーパス等の実際の言語データには現れにくい(「省略」されるわけであるから実際には現れない)現象をいかに分析するかについての考察を進めた。その考察の中間報告というべき研究発表を,8月に開催された日本独文学会言語学ゼミナールについて行い,国内外の研究者との意見交換を行った。その際ゼミナール招待講師であったRickheit教授(ビーレフェルト大学)が進めているテクストの理解プロセスに関しての心理言語学的な実験研究から大きなヒントを得た。それにより研究初年度の後半は研究次年度以降の「プロセスとしての省略」に焦点を当てた研究への基礎作りをおこなった。それを受け本年2月には,東京外国語大学でおこなわれた第二回DAFN研究会において,省略現象についてコーパス分析による研究が持ちうる可能性とその限界に関しての報告を行った。また,同2月にはドイツ言語学会に参加し,ドイツの研究者との研究打ち合わせを行うとともに,次年度以降の研究発表の準備を行った。これらの本年度の成果に基づき,次年度以降の研究において,ダイナミックな過程としてのテクスト生成,テクスト理解について,その汎言語的な記述を進めていく予定である。
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