研究概要 |
本計画研究では,言語における「省略」現象についてテクスト言語学的な視点から捉えなおすことによって,言語間に観察される「省略の度合い」の差について,その原因を主に言語内的な要因にもとめることによって,統一的な説明を与えることを試みたものである。 本年度は,研究計画最終年度であり,今までの研究成果を発表し,まとめた。これまでの研究から「省略」現象の対照言語学的な分析の際には,各言語の文,テクストの生成に共通した指示のストラテジーというべきものを比較対照することが必要になるという知見を得られたが,それに基づき「省略」現象の説明だけにとどまらない,理論的な枠組みを提示することに成功した。これは,2009年にミュンヘン大学に提した博士論文にまとめられたが,この論文は,同年7月に行われた審査講演を経て,「最優秀summa cumlaude」の評価を得るにいたった。 これを受け,2009年9月に広島大学で行われた言語の情報構造についてのシンポジウムで発表した。また同年11月にベルリン自由大学で行われた機能語用論の国際会議に招待され,講演を行った。2010年3月には,学習院大学で行われた社会語用論の研究会にて招待講演を行った。 2010年3月には,本計画研究の成果をまとめる報告書として,同博士論文の改定版を印刷し,国内外の研究者に配布した。また,同研究報告は,本年度中にもドイツの出版社より公刊される予定である。
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