本研究の目的は、北東シベリアのコリマ川上流域で話されているコリマ・ユカギール語について、現地調査を含む資料の収集と整理を通じ、文法の記述を行うことである。具体的には以下のような研究を期間内に行う。 (1)動詞の形態法、非定形動詞の機能、倚辞(小詞)の分類と用法といった、これまでの研究において明らかにされていないトピックをとりあげ、分析を進める。これは、既存の資料のみならず、現地調査による新たな資料に基づいて行われるものであり、記述研究の歴史の浅いコリマ・ユカギール語の文法現象をより深く解明しようという試みである。 (2)言語資料の中でも、民話や伝説といったテキストの記録・録音と整理を進め、その成果を公開する。同時に、既存の資料についてもコンピュータ上で検索が可能なように電子化を進める。このような言語資料は、言語学以外の諸分野、すなわち口承文芸学、民族学、文化人類学といった幅広い研究分野でも基礎資料として重要な価値を持つものと考えられる。また、コリマ・ユカギール人のコミュニティーでは民族語教育が開始されるなど言語・文化の復興運動が進められているが、言語資料を公開することは、このような動きに対する研究者側からの社会的貢献となると考えられる。
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