研究概要 |
本研究の目的は、談話における超分節的要素の果たす機能を、イントネーションを中心として分析し、東南アジアの諸言語のうち、インドネシア語、ビルマ語、タイ語について通言語的な対照研究を行うことである。 イントネーションがFOという音響的特徴と深い関係があることはわかっているが,声調もFOと関係がある.そのため,声調言語であるビルマ語とタイ語について,声調とFOの関係を調べることから始めた. ビルマ語について,最小対の2音節語を用いてFOのどのような特徴がそれぞれの声調を特徴付けている可能性があるかを検討した.その結果,声調はFOだけでなく,声の質あるいは声帯の特徴的な使い方がある可能性を示唆する結果を得ている.これについては,波形分析をさらに行うことを検討している.そして,イントネーションが声調のFOとどのような関係を保つのかを検討する予定.タイ語については,ビルマ語の声調についての知見から,やはり声調についても最小対の語を用いてFOについての分析を進めている.ビルマ語とある程度並行的な,すなわち,声質あるいは声帯の緊張ないし弛緩のような特徴をいくつかの声調について用いている可能性が示唆されつつある. インドネシア語については,名詞文を用いて表現意図とイントネーションの関係を探ろうとしており,FOの資料を収集している.インドネシア語というのが,ジャワ語,スンダ語などの複数の比較的有力な言語集団にリードされて推移している様子であり,そのため,イントネーションの音声資料が,被験者のバックグラウンドの言語に左右されやすく,表現意図による差異よりも個人差がとても際立っている.このような言語状況において,イントネーションをどのように捉えるかを再考する時期に来ている.
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