研究概要 |
本研究の目的は,日本語と韓国語の非対称構造を構造化して描き出すための対照言語学的な基礎研究を行うことにある.非対称構造とは,言語の統辞論的,形態論的な構造を一定の単位に分節してみたとき,複数の言語間においてそれぞれが一対一的,平行的な対応を見せない構造をいう. 本年度は基礎研究の原理論的な研究を中心に行った.とりわけ,対照言語学的な研究が踏まえるべき原理論についての理論的な研究を遂行した.言語の実現形態から〈話されたことば〉と〈書かれたことば〉を峻別し,同時に文体や表現としての〈話しことば〉と〈書きことば〉とも区別することを出発点に,日本語と韓国語の言語事実を収拾し,解析するための理論的前提を確固たるものとすることに努めた.こうした前提を踏まえることは,研究の方法論的な基礎ともなるものである.研究の成果は,第59回朝鮮学会大会の公開講演の配付資料としてまとめている.A5判133ページの冊子である.同稿においては,音論,表記論から形態論,統辞論,談話論を貫く,原理論的,方法論的視座を,言語事実の解析を踏まえ,展開した.複数の言語を対照する方法論的な基礎として,言語存在論,言語場論という形で集約している.複数の言語の対照にあっては,対照言語学の3つの方法を定式化し,同じような言語場において,それぞれの言語ではいかに表現するかのみならず,いかに表現しないかという問いを立てることの重要性を論じた.対照言語学の外国語研究への適用についても論文として『外国語教育研究』誌に発表した.韓国語の待遇法についても論文として発表した.原理論的な追究と平行して,日本語と韓国語の言語資料の収集と解析を遂行中である.
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