研究概要 |
平成20年度に行った研究およびその成果は以下の通りである。 1. アリ語の文字化に関する研究:(1)平成19年度入手のアリ語の識字教育用パンフレットの分析を行った。エチオピアにおいてアリ語・アリ文化に詳しい調査協力者とともに,原文のエチオピア文字からアリ語に変換し,その内容を解読する作業を行った。良い協力者ではあったが,これはしばしば困難を伴う作業であった。それは母音表記の不備を中心とするエチオピア文字使用に伴う問題と,書かれた方言が異なることによるものであった。だが,大枠において内容を把握し,このパンフレットの性格,そこに記された言語についての理解を得ることは出来た。(2)また,現地のキリスト教会が進めている,エチオピア文字使用による聖書翻訳のあり方を検討し,アリ語を文字化するに当っての問題点の整理を行った。 2. エチオピアにおける文字使用の歴史的発展のまとめ:これまでに得られた知見に基づきエチオピアにおける文字使用のあり方を論文にまとめ発表した。(2009年度刊行予定)これにより,エチオピアの近代化と,社会主義体制の成立・崩壊〜連邦制の成立の二つの時期を軸にその流れをとらえることの妥当性を示すことが出来た。 3. 『アムハラ語入門』の続編に向けての作業:昨年度刊行した『アムハラ語入門』は言語学の範囲内だけではなく,エチオピアに関わる文化人類学,歴史学などをはじめとする他分野あるいはNGO関係者などにも有用であるとの反響を得た。そこで,更に深い内容と練習問題を盛り込んでより深くアムハラ語を学べることを目的として続編を刊行することとし,エチオピアでデータ収集を行うとともに,来年度刊行に向けてその基礎的な作業を行った。
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