研究概要 |
今年度は、本計画課題の最終年度にあたり、設備備品の整備の面では、前年度までに購入ができなかったアイスランド語関連文献のほか、所有に関する一般言語学的な研究書の購入を中心に行ない、研究面では、前年度までに扱えなかった課題に中心的に取り組んだ。 研究面について具体的に述べると、身体名称や身につける物が文中で所有者との関係においてどのような標示を受けるかという問題と、eiga「所有する」,hafa「もつ」といった動詞がどのような種類の目的語をとるかといった、所有関係を表わす動詞述語の問題を中心に扱った。 前者については、身体名称と、剣など身に帯びている物を比べた場合、身体名称の方が何らかの形で所有者の標示を伴うことが多く、また、特に身体名称が前置詞句内に現れた場合は、所有者を与格で表わすことが非常に多くなるといった点で、身体名称が一般的な所有物と異なる傾向を示すことが判明した。後者については、動詞eigaは親族関係を表わす他、財産や人材など、持ち主がその所有に責任を負うようなものについての所有関係を表わし、動詞hafaは所有物の一時的な保持に焦点をおいた表現であることを確認した。後者に関連して、現代アイスランド語で発達している前置詞を用いた所有表現(vera me〓~'be with~'「~を(身につけて)もっている」)が古アイスランド語ではほとんど見られないこともわかった。
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