研究概要 |
・本研究の目的は,結果構文およびその周辺構文を,《イベント間関係読み込み》という観点から見直すことにある。19年度はその準備段階として,自然言語の記述に有効な語彙情報の特定法に向けての研究を行った。 ・「ピアノを始める」は,"趣味(演奏だけでなく,収集も可能)として始める""商品の取り扱いを始める"という解釈はあるが,"ピアノを弾き始める"という解釈はない。「xがyを始める」という時,yには<進行>がなければならない。その<進行>の有無は,「*ピアノはこうして進行する」が言えないのに対し,「番組はこうして進行する」が言えることで確かめることができる。<進行>の制限は,「今その動作(=演奏)を始める」という解釈の時に課せられるものである。"趣味""商品取り扱い"では,ピアノは演奏の道具としては見られていない。 ・「タバコをやめる」は,"進行中の動作を途中でやめる""商品の取り扱いをやめる""習慣をやめる"等々の解釈が可能である。「Nをやめる」は,「xがyとしてのNをなしにする」と記述できる。これらの解釈の幅はyの取り得る範囲によって決定され,従って可能なyが名詞「タバコ」の有効な語彙情報である。 動詞manageの意味を「xが能力をもってNのyを実現する」とすれば,組織としての機能があるcompanyではyが<機能>であり,「運営する」の意味になる。しかし論文には組織としての機能はないため,manage two papers in a monthではyが<存在>と解釈され,「存在を実現する」ために能力を要するという含意が生じる。
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