研究概要 |
John sneezed the napkin off the tale.やMary bowed him in.のような表現は,(1)本来的に他動詞でないものが目的語と目的格補語を取っており,(2)その補語は結果状態を表示する,という点で研究者の関心を集めてきた。この種の臨時的構文の考え方として,次の3つのアプローチが代表的なものであろう。 1.結果構文という「構文イディオム」であるとする 2. 「玉突き」というスキーマに依存したものであるとする 3.動詞の語彙情報「目的役割」に依存したものであるとする これらは,(1)が(2)の結果であるとする,という点で同種のアプローチである。つまり,補語が結果状態を表す(つまり(2))ことを与件として受け入れ,(3)結果状態があるからには,その結果に至るサブイベントの主体がなければならない,というように。本研究では,(2)を与件とせず,(2)を説明の対象とするアプローチを提示する。従来のアプローチのように(1)が(2)の結果であるならば,思考ロジックが人類共通であるならば,(4)なぜ英語だけにこの構文があるのか,が分からなくなるからである。本研究は,(1)は分詞構文を受容するメカニズムに関係があり,(2)は与件ではなく,イベント間関係読み込みの自然な帰結である,と主張する。 本研究のアプローチは,概略次のようなものである。英語の分詞構文は,接続詞が明示されない限り,二つのイベントが並んでいるだけであり,理由や付帯状況といった解釈は,その二つのイベントの間に読み込まれるものであり,構文自体にそのような意味要素を認める必要はない。結果構文も基本的にはそれと同じである。ただし,結果構文では,二つのイベント間の関係として読み込まれるものは<継起>しかない。それは,disjunctである分詞構文と違って,結果構文では第二イベントがadjunct関係で並んでいる,という統語的な配列からくる制約を受けるからである。
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