研究概要 |
平成19年度は、「個別言語の記述」において、日英語の比較構文の再分析を行った。特に(1)と(2)の文法性の差は、Heim(2000,2006)が提唱している「than」節のLF上昇分析同様、「より(も)」によって導かれる節がLFにおいて上昇することによって説明されることを明らかにした。 (1) ??先生が、[[酒を飲んだより(も)]大勢]ビールを飲んだ。 (2) 太郎は、本を[[次郎が買ったより(も)]たくさん]買った。この主張が正しいとすると、日本語の「より(も)」によって導かれる節は、英語の「than」節と同様に分析されるべきであり、Becket al(2004)の分析が維持できないことを意味している。 また、更なるインフォーマント判断を行い、(3)に代表される例文が文法的であると判断されることから、Ishii(1991)において主張されていた日本語の比較構文における(Affected)Themeを目的語にとる述語とNon-themeを目的語としてとる述語の差は、実際には観察されないことを明らかにした。 (3) 太郎は、生徒を[[次郎が誉めたより(も)」大勢]誉めた。 (1)と(3)の文法性の差からは、「より(も)」によって導かれる節のLF上昇が目的語を修飾する浮遊数量詞からは許されることが明らかになった。これは、他言語(例:英語)で観察されているように、日本語においても目的語を修飾する二次述語からは要素の抜き出しが許されるためであると考えられる。 次に「比較対照研究」に移り、特に(1)と(4)の文法性の差は、「than」/「より(も)」によって導かれる節の生成される位置の違いに起因することを明らかにした。 (4) A lot more teachers drank beer than drank sake.
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