本研究の目的は、バントゥ諸語の動詞の派生形の形態・統語論について、広く個別の言語の事象をみて比較検討し、バントゥ諸語の形態・統語論の概説をまとめることである。個別の研究者がそれぞれに言語調査を行い、個別の関心にそって言語記述をおこなうことを土台とするが、さらに若手バントゥ語研究者たちを研究協力者にむかえ、研究会をもってそれぞれの研究の進捗状況を発表し合う。そうすることによって、バントゥ語の形態・統語についての共通理解を促し、新たな問題を認識し、日本のバントゥ語研究全体の見識を高めることにつながると考える。 さらに将来的には、日本語によるバントゥ語概説書の作成をめざす。バントゥ諸語については、アフリカでもっとも広域に話され、またその所属言語の数も多いことで知られており、アフリカの言語の中では世界的にも研究が進んでいる方ではあるが、日本での理解はまだまだその端緒についたばかりである。多くの若手研究者が輩出されている昨今、このような概説書を編むことは不可能ではなく、また後進の研究者にとっても必要な作業である。 本年度は2009年1月10日に研究会をもち、若狭基道氏が「ウォライタ語の引用」と題して発表した。また、米田信子氏がナミビアに海外調査に行き、ヘレロ語の派生形と目的語、語順などについての調査をおこなった。米田氏はその成果を海外の学会などで発表し、本研究によって得られた成果の公表に努めている。また、研究代表者はバントゥ語の代表的言語であるスワヒリ語の入門書を著し、研究成果の社会的還元の一端とした。
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