今年度は、前年度末に現地(初等・中等教育学校)でおこなった調査(聞き取り調査、および資料収集)に基づき、研究分担者がその報告を研究会においておこなった。そこでは、この調査により現地の教育機関における言語教育の現状があきらかにできたと考えている。すなわち、多言語の状況が生まれやすい欧州のなかにおいても、スペイン・フランス両国の境界地域に位置するアラン谷のより特異な状況が、観光資源の開発とともに、さらにより複雑な言語環境の様相を呈していることが報告できたと考えている。また、研究分担者は、カタルーニャ自治州全体の司法通訳制度構築における同地域の現状を自治州全体の状況とも比較する報告を学会においておこなった。 さらに、今年度は2回の打ち合わせをおこない、また、海外研究者との連絡も引き続きおこない、あらたな研究者を紹介され、現地調査の際に面会した。その際、研究代表者が前年度に開始した形態・統語的記述に関して生じたいくつか疑問などを質問した。この記述に関しては、前年度に入手したオック語ガスコーニュ方言の正書法及び形態・統語上の規範文法書との記述の相違点を詳細に吟味し、面会の際に明らかになった正書法制定時の経緯などの記述も含めた総合的な記述を引き続きおこなった。このように同地域の言語と言語政策に関する記述が今年度もよりいっそう具体的に遂行できたと考えている。
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