研究概要 |
1)ドイツ語,英語,日本語の数量表現を名詞との関係で研究した。先行研究を検討しつつ,コーパス等のデータを分析した。特に,日本語の名詞句とドイツ語・英語の可算名詞,数詞を比較対照し,ドイツ語・英語タイプの言語では,単数形が形態的・意味的にデフォールトであること,日本語タイプでも単数解釈がデフォールトであることを見出した。この成果は,論文・吉田(2008)「ドイツ語名詞の単数に関する一考察」として発表した。 2)先行研究では,冠詞がない日本語の名詞は,英語・ドイツ語の物質名詞と類似していると指摘されるが,複数「たち」の付加,概数の付加(「机50」),「多数」「多量」の分布の相違など,日本語にも可算vs.不可算の相違があることを明らかにした。この成果はアジアゲルマニスト会議(2008)で"Zahlbare Massennomina. -Wie wird die Individuierung im Japanischen kodiert?"(可算的物質名詞-日本語の個体性のコード化)として発表した。この研究成果についてM.Krifka教授(フンボルト大学)と意見交換した。また,日本語と中国語の数量表現の相違(助数詞,量詞)についても具体例を調査した。 3)ドイツ語の可算名詞は通常冠詞を必要とするが,述語用法や並列など,冠詞が現れない場合がある。英語と類似しているが,ドイツ語ではより無冠詞形が多い。どのような場合に数が問題にならないのかを分析した。この成果は2008年秋季日本独文学会で「ドイツ語の無冠詞+可算名詞の分析」として発表した。
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