最終年度の本年は申請書の予定通り(1)「蛮話」の位置づけ、(2)「福寧方言群」の検討、(3)寧徳方言の位置づけ、を行い、総まとめとして論文「論びん東区方言的分区」を中国語で執筆し、「歴時演変与語言接触:中国東南方言国際研討会」において口頭発表した。この論文の結論を要約することにより、研究実績の概要としたい。(a)いわゆる“変韻"は下位分類の相対的に遅い段階で発生したため下位分類の基準としては不適当である;(b)びん東区方言群は南北に二分割するのが適当である。その主たる根拠は鼻音韻尾の対立の有無、中古濁入声の連読変調のタイプ、通攝三等舒声韻がiやyを持っか、のみっつである;(C)寧徳方言は北部方言群に分類するのが適切である。その南部方言群的特徴は古い特徴の保存と解釈される(上記(3)に対応):(d)寧徳方言以外に、屏南県黛溪方言群も北部方言に分類される;(e)浙江省最南部に分布する蛮話は北部方言群に分類される(上記(1)に対応);(f)南部方言群は福州方言群と福清方言群にさらに下位分類される。この分類は前者に属する諸方言の音韻体系が《戚音八音》の音韻体系から導ける一方、福清方言の音韻体系がそれからは導かれない点に基づく;(g)北部方言群はさらに福寧方言群と浙江方言群に分類される(上記(2)に対応);(h) 浙江方言群とはいわゆる「蛮話」であるが、内部差異が際だって大きく、その扱いに関しては、今後さらに検討を続ける必要がある。(620字)
|