研究課題
モンゴル帝国時代にウイグル文字を借用してモンゴル人が自らの言語を表記したものが、モンゴル文語であり、モンゴル語仏典は文語の形成及び発展の歴史に大きく関わった。ウイグル文字とウイグル仏教は同時にモンゴル人の知るところとなったからである。このように仏典と文語はいわば両輪として発達したのであるが、17世紀のチベット仏教の第二次導入以降、各地方で仏典の翻訳や出版等に使用された地方文語も独自の発達を遂げて、オイラット文語等を生んだことはよく知られている。これらをも視野に含めて、仏典モンゴル語さらには俗文献で使用される古典期のモンゴル文語の形成史解明が本研究の最終的目的ある。最終年度の今年度は、引き続き各地に所蔵されている文献資料に関する基礎的な調査と解析を行うと同時に、本格的な研究進展と成果開陳に意を用いた。その結果、地方の文語が中央部における文語形成に果たした役割の一端を明らかにした。また、モンゴル語仏典にはさまざまないわば「地方版」があることは夙に知られた事実であるが、それらは実は清朝時代の大蔵経の校訂・出版に際して結集されたものの中で、正式に採択された版以外のものであること、そしてこれらが元朝時代に翻訳された各種の異本を忠実に反映してものであって、言語接触の痕跡を豊かに保存した言語学的及び文献学的にきわめて高い価値を有するものである可能性が大きいことを明らかとした。これらの成果を国際学会において発表し学会誌に掲載するとともに、具体的な仏典に関する研究成果を紀要に掲載した。
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愛媛大学法文学部論集人文学科編 第28号
ページ: 47-66
Myth and Mystery in the Altaic World(Proceedings of the 5 2^<nd> Annual Meeting of the Permanent International Altaistic Conference held at Huhhot
ページ: 64-73